かつて北斗の拳がテレビ放映されていて
「お前はもう死んでいる」という言葉を茶の間で聞いていたころ
アパレルはすでに死への道を着々と歩んでいたのだ
1980年代はアパレル産業の分岐点と言っていいだろう
北斗の拳の設定は
核戦争によって文明と人々の秩序が失われ、水と食料といった残された資源をめぐって争いが繰り返されるという最終戦争後の199X年が舞台
であったが
そうなる前にアパレルはすでに墓の中に入ってしまった
何という愚かなことか
自らが築き上げてきた栄光を自らの手で葬り去ってしまったのだから
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そんな今このような本が売れている
しかし今の日本にはすでにアパレル(綜合アパレルメーカー)という存在は消滅している
アパレル成長期
それまでの1980年代までの既製服製造業は自社企画のもとに着々とオリジナルを製造していた
まさに日本のアパレル産業の高度成長時代である
これは何も繊維産業だけではない
日本のあらゆる物作りをしている製造業全体に言えることでもある
もともと既製服というものは戦後に作られたものでありそれまでは服地を買ってきて家庭で縫っていたものである
それまでは特殊なもの以外の「日常着」は手作りでまかなっていたものである
アパレルという言葉はもとはというと既製服製造業のことであり今のようなファッション業界全般のことの様な使い方はしていないのだがその話はいいとして
そもそも「綜合アパレルメーカー」という言葉がアパレルそのものであり
それ以外はアパレルとは呼ばないのだ
本来のアパレルは服をデザインして製造して販売することが仕事である
自社企画の自社ブランド、自社で企画生産販売をするということである
この機能を持ち合わせていない会社はアパレルとは言わない
タイトルに付けたように20数年前ごろからすでにアパレルというもの自体が無くなりつつある
アパレルの成長はレナウンを例にあげるとわかりやすい
カタカナの名前すら嫌われていた日本のファッション業界に
レナウン、オンワード、エトワールなどというアパレル(既製服製造業者)が現れ
それに伴い服地を供給する会社も
ロンシャン、吉忠ロマン、タキヒョー、などとやたらにカタカナの社名に変えていった時代があった
そんな時代から現在までですら日本国内で60年足らずの歴史しかないのがアパレル業界なのだ
たまたま戦後の高度成長期に西洋文化が日本国内で開花しただけのこと
それまでの日本はファッションというもの自体を語る余裕すらなかった
それ以前の日本は
本来川上であり一世を風靡した紡績業が繊維産業をリードしていて
既製服製造業であるいわゆるアパレルにスターの座を奪われた時期があり
その代表が当時としては2000億というダントツの売り上げを誇ったレナウンなのだ
他にもワールド、ビギなど1980年代の人気実力共にあったアパレルは多数存在していた
そんな中でレナウンはメンズ、レディース、子供服をトータルに展開していた分
その売り上げもずば抜けていたといえよう
しかも当時当たり前のことながらオリジナルの自社企画で物作りを広げていた
アパレルの凄さはその会社でしかできないオンリーワンのオリジナルの企画である
しかし同業他社のライバルが次々と現れ業界全体が過剰競争になるのは当たり前である
高度成長時代の日本はまさに作れば作るほど伸びていったのであるから
もちろん良質のオリジナルが条件になるが、、、、
そんな時代の中、次の手を模索していたレナウンが打ちだしたのが
ライバルを打ち落とす知名度を出すにはどうすればいいか
それがライセンス(権利)契約である
このライセンスが始まった時点で100%の自社オリジナルは崩壊してしまうことになる
誰も気づかないアパレル崩壊の第一歩であるのに、、、、
外部のしかも知名度のある人やブランドの力を借りて自社ブランドを伸ばすことがどれだけ恐ろしいことか
たとえばレナウンのダーバンはまさにオリジナルのブランド(1970年創設)
その名の由来は公式サイトにある
公式サイトによると、
1922年に英国皇太子が船で来日した時、
御召艦”RENOWN”に巡航してきた供奉艦が”DURBAN”という船で、
名前のもととなったのが”総督”の
Sir Benjamin D’Urban
という人で、その総督の名前がブランド名の由来。
ダーバンは生粋のレナウンのオリジナルブランドである
10年もの間アランドロンという当時泣く子も黙るフランスの人気俳優をコマーシャルに起用して 一世を風靡したブランドだ
ところがライセンスのアーノルドパ―マーはダーバンより1年早い1969年にレナウンがライセンス契約をしている
すでにアメリカで展開していた傘マークで人気のアーノルドパ―マーは
ゴルフブームを迎えた日本で人気ブランドとなった
アーノルドパーマーは、日本初のトータルファミリーブランドでもある
メンズはもとよりレディース、子供服の展開で人気を博し一度は無くなったものの
2010年ごろから人気のリバイバルとなった
しかしレナウンが1969年にアメリカの人気のゴルフプレイアーのブランドライセンス契約した時点ですでにオリジナルとしてのアパレル機能は崩されつつあったわけである
ライセンスはその知名度で極端に会社に貢献するシステムである
と同時に会社のオリジナル性をむしばむ害虫のような存在であるということを
誰も指摘しない
誰も気付いていない
なぜならばそれほどおいしい商売ができる契約(ライセンス)だからである
ライセンスは極端に会社のオリジナル性(独自性)を失う
しかしそのことを承知で甘い蜜に向かうのが日本人の最大の欠点である
安売りするな価値を売れが本来のアパレルスタンスであるべきなのだが
その”価値”を外部依存してしまうのが日本人の愚かな体質なのだ
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その後の物作りと販売
紙の本が売れない出版関係などは後からついて来ているわかりやすい例だが
アパレル業界は当の昔にすでに衰退の道をたどっているのだ
先ほど述べたアパレルの生地の供給元であるテキスタイル業界はアパレル業界の衰退と共に同じ道をたどっているのだがそれはテキスタイルの記事に書くとしてアパレル業界に変わって主導権を握りだしているのが小売店だ
1980年代から小売店は服に限らずPB(プライベートブランド)を打ちだしている
しかも服の場合アパレルに作らせているのだ
本来アパレルのオリジナルを仕入れる小売りが
自分の意見が大半をしめるPBをそのアパレルに作らせている
主導権は完全に小売店に移動しているのだ
もちろん小売店はアパレルにとってはお客さんなのだから
言いなりになるのは無理もないのだが
売り場の強みである販促情報
客の反応と要望を重視した消費者主導型の物作りが始まったと同時に
アパレル主導型が極端に崩れ去り小売店主導型になり下がった
と同時にアパレルの企画力が衰退しだしたのだ
自社企画が小売店に受け入れられなくなるという事態はアパレルにとっての方向転換が必須であり
アパレルがやらなければいけないことは
売れるものしか作らない
小売店の売れるものしか買わない主義の思惑にハマるしか道はない
売れるものの情報しか重視しない小売店はアパレル本来のオリジナリティーを無視した戦略に斬り替わっていった
その小売店が自ら選んだ戦略は後々自分の首をしめることなど思いもよらなかったであろう
これはまさに相手主導型の始まりなのである
売り場(小売店)からの要請で物作りが始まるとアパレルのオリジナル性が極端に低下する
下の画像のようにアパレルのオリジナル性はライセンスによって失われしかも小売店の丸投げによってさらにオリジナル性は無くなり相手主導型に変わってしまう
アパレルは物作りを全く知らない小売店からの要望を聞く
小売店は自分主導のもとアパレルにモノ作りを丸投げする
丸投げされたアパレルはすでに企画力が低下していているのと
消費者の意向が見えない状態で生産販売しなくてはならない
するとアパレルからすれば小売店主導型という相手初動型になってしまう
この悪循環がアパレルを腐った抜け殻にしてしまったのだ
さらに悪循環は今も続くのだ、、、、
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今の物作りと販売
生地の供給元であるテキスタイルメーカーははこのデフレの時代に生き残ってゆくために海外生産を始める
大手商社、専門商社も同じ図式だ
しかも生地の供給だけでは生き残れず製品にまで手を染める
アパレルが本来やるべき仕事を
業界全体がやりだしている
繊維業界は
紡績が原料を調達して
現場の機屋に送りこみ染工所で色を付け
生地屋が生地を作り
アパレルが服を作る
そのために縫製工場を使う
そしてでき上がったものを商品として
小売店が売り場で売る
こんな流れは今は全く存在しない
そのすべてを行っているのが小売店と商社だ
それ以外の職種はすべて抜け殻状態で死んでいる
ただただ言われたことを行うだけの業界になってしまったわけである
では誰が企画デザインしているのか
それは誰もいないのである
在るのはただ
情報だけ
売れ筋という情報が企画デザインをしているのだ
そこに人の心は
そこに人の意志は
入り込む余地がない
企画スタッフやデザイナーは
自分の感性でデザインして物作りをする
こんな図式は今のアパレル業界には存在しない(一部の一握りのブランド以外は)
ユニクロと手作りとレンタル
ある意味ファッション産業はすでに死んでいる
今残っていてこれから流行るのは
小売店主導型の服
手作りの服や物
それにレンタル
要するに
ユニクロに代表されるようなSPA(製造小売業)で服を買い使い捨てをする日本人が大半をしめ
大切に自分の好きなものを買い一生使う
そんな人だけが手作りのものを大切にする少数民族として残ってゆく
その他大勢はポケモンゴーを追っかけるように
服を消費して
服をレンタルする
すでにそんな時代になっている
自分が好きで気に入って選ぶ
そんな服や小物だけは絶対にレンタルなんかしてほしくないものだが、、、、
さて次回はそんなレンタルとライセンスと手作りの話をしたいと思う
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